情報発信のツールとして、デジタルサイネージとLEDビジョンの需要が増えています。
いずれも、デジタル系の映像を映す手段となりますが、違いがいまいち分からないという方も多いでしょう。
本記事では、デジタルサイネージとLEDビジョンの違いについて解説します。

デジタルサイネージとは

ディスプレイやプロジェクターなどを設置して情報を発信するシステムです。広告宣伝や情報提供のために、銀行、オフィス、工場、店舗、ホテルなど、公共施設に設置して、電子看板や電子掲示板として活用されています。

視覚効果が高く、音楽や動画も一緒に発信されるため、従来型の紙媒体と比較しても、より発信力の高いシステムとして需要があります。

  • デジタル:digital。連続的な量を段階的に区切って数字で表すこと
  • サイネージ:Signage。建物や公共の場にある看板や標識のこと

デジタルサイネージは、携帯やパソコンの画面と同等に画質が鮮明で、屋内で400〜1,200 cd/㎡、屋外で1,200 cd/㎡以上の輝度があります。比較対象として、家庭用テレビの輝度が350~500cd/㎡です。

関連記事:デジタルサイネージの仕組みとは?導入する利点欠点も解説

LEDビジョンとは

発光ダイオード(ⅼight Emitting Diode)を搭載した大型の表示機器、ディスプレイのことです。LEDビジョンの輝度は、2000〜8000cd/㎡、とデジタルサイネージと比較してもかなり明るいです。画面を覆うLED素子自体が発光することで、より鮮明な明るさを確保できます。
LEDビジョンは、屋外で日中でも鮮明に画像が見えるので、屋内・屋外に限らず、設置場所の自由さがあります。

パネルの組み合わせから構成されているため、固定された画面の大きさではなく、つなぎ合わせて1台に自由にレイアウトも可能です。
さらに、LEDビジョンの形状は、透過型、フレキシブル型、床設置型、とさまざまなタイプがあり、用途に合わせて自由にデザイン設計することができます。

関連記事:LEDビジョンとは?その仕組みや設置するメリットを解説

デジタルサイネージとLEDビジョンの違い

デジタルサイネージとLEDビジョンの違いについては、発光のしくみ、使用用途、設置場所、輝度、防水・防塵耐性などほか、異なる点があります。

大きな意味としての違いは、LEDビジョンは、ディスプレイそのものを示し、デジタルサイネージは、ディスプレイを含むシステムのことです。発光ダイオードが用いられているか否かも2つの主な違いです。

デジタルサイネージの中には、LEDビジョンを採用したものもありますが、一般的には、液晶タイプのものが多くなっています。

 

デジタルサイネージ

LEDビジョン

発光

光源はガラスやフィルターの後ろにあるため、屋外では日光によって明るさが変わる

光源はLED電球そのものなので、輝度が高く、屋内・屋外問わずに明るい

設置場所

店舗の入口

ビルの壁面に設置されている広告

駅構内にある広告

駅や空港の電子掲示板

輝度

400〜1,200 cd/㎡、屋外で1,200 cd/㎡以上

2000〜8000cd/㎡

防水・

防塵耐性

掲載されていないものもある

防水・防塵耐性が高い

視認距離

約1.5~3メートルほどが最適な距離

約10メートル

黒色表現

完全な黒色を表現できない

黒色を表現することが可能

違い①仕組み

LEDビジョンは、基盤となる板の上に赤・青・緑の3色の発光ダイオードが入っている部品の「素子」を密集させて映像を映し出します。

大画面のLEDビジョンを分解すると「ユニット」というパーツに分解され、「ユニット」は、「モジュール」という小さな1枚のパネルから構成されています。

デジタルサイネ ージは、「スタンドアロン型」と「ネットワーク型」があり、「スタンドアロン型」は、オフラインでコンテンツを表示させるタイプでデータをUSBメモリーやSDカードに保存して映します。

「ネットワーク型」は、ネット回線から表示させるタイプです。

違い②輝度

輝度は、画面の明るさを示す指標です。単位は、cd/m²(カンデラ毎平方メートル)です。LEDビジョンは、デジタルサイネージよりも5倍以上明るく、場所を問わず設置できます。

屋外ディスプレイを設置する際に、太陽光などの影響を受けずに使用する場合は、LEDビジョンの方がデジタルサイネージよりも適しています。

違い③黒色表現

画像で黒色表現できるのは、LEDビジョンです。素子そのものが発光して黒色を表現することができます。一方、デジタルサイネージでは、バックライトを遮って微妙な光が出てしまうので黒色表現はできません。

黒色表現を示す目安となるコントラスト比は、「白」を最大の明るさとし、「黒」を最小の明るさとした比率で、コントラスト比が高いほど、明暗の違いがありシャープではっきりとした映像を表現できます。したがって、ディスプレイの色で黒色表現できると、よりリアルな映像を映すことが可能になります。

違い④防水・防塵耐性

屋外でディスプレイを設置する場合は、チリやほこり、雨水の侵入などの影響を受けやすくなります。防水・防塵耐性の機能は、外部からの被害を受けずに製品故障を防ぎます。

LEDビジョンには、防水・防塵耐性が搭載されている製品も多く、雨ざらしになる屋外の場所や海の砂浜でも利用可能な機能が搭載されています。
一方、デジタルサイネージは、防水・防塵耐性のない製品もあります。一般的には、屋内用のディスプレイとしての需要が多いです。

防水・防塵機能の等級については、国際基準で定めた「IPコー ドInternational Protection」で示します。
例えば「IP65」は、6=粉塵からの保護を示す数字(防塵性能)で、5=水からの保護(防水性能)を示す数字です。(防塵性能)は、0〜6の7等級、(防水性能)は、0〜8の9等級に分類されています。

違い⑤視認距離

ディスプレイを鮮明に視認できる距離は、デジタルサイネージよりもLEDビジョンが優れています。デジタルサイネージは約1.5m〜3mほどで、LEDビジョンは、10mほどの距離から映像を視認できます。

野外イベントなどで遠距離からも見ることができるのは、LEDビジョンの方が適しています。LEDビジョンは、素子の集合体で形成されているため、高精細に映像を映し出すことができます。

一方、近くで画像を見る場合は、圧倒的にデジタルサイネージの方がきれいで見やすくなります。駅構内や店舗入り口のディスプレイなどには、視認距離の近い方が向いているデジタルサイネージが設置されているケースが多いです。

デジタルサイネージとLEDビジョンのそれぞれのメリット

デジタルサイネージとLEDビジョンの特徴から、それぞれのメリットを確認しましょう。

デジタルサイネージのメリット

デジタルサイネージは、ポスターや看板のように貼り替えたりする必要がなく、紙媒体よりも動きのある表現やデジタルならではのアピールが可能になります。
デジタルデータがあれば、自由な表現で広告宣伝や映像発信ができるようになります。

では、デジタルサイネージの主なメリットについて解説します。

メリット①スペースが小さくても情報を発信できる

動画や静止画を小さなスペースで視覚効果のある表現ができます。動画による表現の他にも
静止画の場合、違う画像を連続して映し出し、わずかの映像の変化で、見る人の目を引くことが可能です。

紙媒体では、紙サイズの制限された情報しか発信できませんが、デジタルサイネージであれば、ディスプレイのサイズが小さくても情報発信力が高い訴求表現が可能になります。

メリット②目立たせることができる

動きのある表現とデジタル技術による効果で、電車の中や店舗の宣伝看板などを目立たせることができます。さらに、映像に音声や音楽をプラスすることで、より注目しやすいディスプレイを表現することができます。

また、タッチパネルなどが搭載されている機種であれば、来客者が能動的に情報をキャッチできる流れができます。

メリット③設置場所を選ばずに自由度が高い

参考:コミックマーケットでLEDビジョンが活用された際の画像

デジタルサイネージは、大きさは大小さまざまで、さらに、いろいろな形状のディスプレイで表現できます、専用スタンドに立てるタイプ、吊り下げタイプ、壁掛けタイプなど、人通りの多い場所や目線に留まる場所など、目に入りやすいポイントに設置することができます。

メリット④無人で情報提供ができる

デジタルデータをもとに、設置した日から無人で情報提供ができます。情報の管理は、リモートで対応できて、通常は無人でも管理が可能です。
無人コンビニで は、デジタルサイネージの活用で、入場時の案内説明から利用案内、店内広告など、すべてデジタル上で管理されています。

来店客のニーズに合わせたデジタルサイネージの導入によって、無人でも快適に買い物ができる仕組みができています。

LEDビジョンのメリット

デジタルサイネージでは表現できない部分を、拡大させてもっと自由度の高い映像表現が可能になります。

では、LEDビジョンの主なメリットについて解説します。

メリット①部分的に交換できる

LEDビジョンは、もし部分的に故障した場合は、モジュールのみ交換するだけで大丈夫です。一方、デジタルサイネージでは、ディスプレイが故障した場合は、本体ごと交換をしなければならないので、手間やコストもかかります。
LEDビジョンの方が故障したときのリスクを抑えることができます。

メリット②空間を演出できる

曲面型LEDビジョンであれば、弧を描くように空間を演出できます。フラットな映像から曲面状の映像に代わることで、より大きなインパクトを与えることができます。

ディスプレイの表示面が曲がっていて波のような緩やかな形状になっているので、よりダイナミックな映像表現が可能になります。軽くてやわらかいゴム板のように自由自在に曲げられて、LEDモジュール背面のマグネットで、スチール板があれば簡単に取りつけできます。

メリット③長く使用できる

LEDビジョンの法的耐用年数は「3年」です。ただし、法定耐用年数を超えたら使えなくなることはなく、設置する環境や運用する時間、製品によって変わってきます。

LEDの寿命は4〜5万時間で、1日24時間LEDビジョンを稼働した場合におよそ5〜6年程度が耐用年数と言われています。また、ディスプレイやコンテンツを格納するセットトップボックス(STB)の耐用年数は、「5年」です。
したがって、寿命と法定耐用年数、STBの耐用年数を考慮すると、使える期間の目安は、およそ5年程度になります。

メリット④屋外でも映像をきれいに映し出せる

参考:エアーレースパブリックビューイングでLEDビジョンが活用された際の画像

雨や風に強い防水・防塵機能が搭載され、日光に影響されない鮮明な映像を映すことができます。屋外にモニター設置する際は、日々の劣化がしやすい環境であるため、防塵防水の性能が必須となります。台風でもトラブルなく使用可能なので安心です。

デジタルサイネージやLEDビジョンを導入する際の注意点

デジタルサイネージやLEDビジョンを導入する際は、製品の機能や特徴を理解するほかに、情報として発信するコンテンツのクオリティや運用する際の注意点について確認しましょう。

注意点①コンテンツ

ディスプレイによる情報は、テレビの視聴とは異なり、「〜ながら」の人に注目してもらうことが重要です。歩きながら、会話しながらの人に対して伝える発信力が大事です。

そのためには、まずは、短時間でわかりやすい伝え方で、気が付いてもらうコンテンツ作りが必要です。

例えば、季節感を考慮すること、長文ではなくキャッチコピーにすること、更新頻度を増やして新鮮な情報を届けること、音声や音楽を加えること等、ターゲットや利用シーンに合わせたコンテンツを作りましょう。

注意点②運用方法の選定

運用方法については、USBでコンテンツを更新できるスタンドアロン型や、ネットワーク回線のクラウドサービス型、データベース化してシステム連動する方法などがあり、運用を外部に依頼することも可能です。

デジタルサイネージとLEDビジョンで映像表現が広がる

デジタルサイネージとLEDビジョンは、設置場所や使用用途、視認距離、輝度などの違いがあり、利用シーンやターゲットに合わせて選ぶことができます。

いずれも従来型の紙媒体よりも、豊富な情報を発信できて自由な映像表現ができます。製品を選ぶ際は、購入またはレンタルでも導入可能です。活用の場に合わせて適切な製品を選びましょう。

LEDビジョンのレンタルならレンタルビジョン

監修者
木下 大輔

<役職>キノテック株式会社 代表取締役

<経歴> 大学卒業後、三菱電機子会社でLEDビジョンのレンタル・運営業務に従事。 その後、技術取締役として映像技術会社を経て2020年にキノテック株式会社設立。